先日、ハイグレードな施設に訪問施術に行ったときの話しです。
いつものようにノックをして部屋に入る。
「おはようございます」とベッドで寝ている患者さんに声をかけると、しっかりした口調で返事が返ってきました。
90代女性のAさんは、いつも身綺麗にしているんですが、今朝は少し様子がおかしい。
私の顔を見るなり
「ズボン履いてないねん、どこいったかわからへん?」
と言いながら布団をめくってオムツ姿を見せる。
どうしたものかと辺りを見渡すと、ベッドの柵にズボンが掛けてあったのでそれを渡したが、やっぱり1人で履けない…
ベッドに座った状態で足が上がらず上手く履けないのだ。仕方がないので履くのを手伝い施術をしました。
Aさんは、日頃は押し車を押して館内を歩いています。丁度買い物に行ったときに、ショッピングカートを押して歩いたら楽なのと同じです。
施設の種類にもよりますが、入居している方の大半は車椅子生活です。
入居するときは歩けていても大抵は車椅子生活になります。
Aさんも、少し前までは押し車なしでも歩けていたんですが、今は立ち上がるのがやっとです。
なぜ施設の入居者の大半が車椅子になるのでしょうか?
その理由は2つです。
1つ目の理由は、施設内で転倒事故が発生すると責任問題です。なので再発防止策として、車椅子に座らせ1人で歩かせないようにするからです。
2つ目は、1日の大半を寝て過ごしているからです。
施設に入居するとやることがないんですね本当に…
何もしなくていいとなると、何かをしようとする意欲が低下してくる。
そこをなんとか踏み留まることが出来るかどうかは意識の問題です。
実際に同じ施設のBさんは「私、絶対に車椅子にはなりたくないの!だから部屋にいても寝るとき以外はベッドに寝ないようにしているの!」
と言っているBさんは、訪問するといつも椅子に座っていて足腰もしっかりしています。
また意欲は、認知症が進むと低下も進みます。
あれが食べたい、あそこに行きたいとか、何かをしたいという欲や好奇心がなくなってきます。
Aさんが、それにあたります。
「もうなんもする気がせえへんわ・・・」
「寝ているのが一番楽でええわ・・・」
といつも言ってます。でもある日
「誰にも頼られへんようになったらあかんね、何もする気せいえんわ・・・」とぼそっと言いました。
ハッ としました。
誰でも人は、誰に頼られるから頑張れるものなんだと、だから歳をとっても何かしら役割があったほうがいいんだなと、あらためて気づかされました。
もしあなたが、車椅子生活になりたくないのなら介護施設に入らないことがおすすめです。
そして好奇心をもって毎日を過ごすか、少ししんどいかもしれないが誰かの役に立つ日々を送ることです。
55歳から日本全国を歩いて測量し、日本地図を作った伊能忠敬の言葉です。
人間は夢を持ち前へ歩き続ける限り、余生はいらない
伊能忠敬
何かを始めるのに遅いということはない。
そんな思いで、いくつになっても挑戦して生きたいものです。
上がってなんボ!
コメント